佐藤優著『人をつくる読書術』(青春新書インテリジェンス) 世の中には「本を読む人」と「本を読まない人」がいる。そして「本を読む人」にしか得られないものがある。本書は何をどのように読むか、さらになぜ読まなければならないか体系的にわかりやすく書…
自分の存在は他者という鏡を通して確かめることができる。他人がいるからこそ、自分がいる。ところが他者との関わりが全く失われてしまったとき、人は自分自身の存在を確かめることはできない。 主人公の「僕」は自分自身を映し出す鏡をすべて失ってしまった…
『羊をめぐる冒険』は、『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』に続く「青春三部作」の完結編だ。謎だらけの小説なので、謎をあらかた書き出しておいた。どのピースがどこにはまるのだろうか。ドキドキしながら読んでいる。 村上春樹著『羊をめぐる冒険』(…
福沢諭吉著『福翁自伝』に出てくる勝海舟はあまりカッコ良くない。福沢諭吉は勝海舟と咸臨丸でアメリカ渡航を共にした。咸臨丸の艦長は木村摂津守だが、実質的艦長は勝海舟だった。が、船にめっぽう弱い勝はこんな書かれ方をしている。 「勝麟太郎という人は…
「見ておいて損はない名作映画100選」の7作目だ。ネタバレあり。 この映画こそ映画館で見るべき映画かもしれない。メキシコの赤茶けて乾ききった大地、砂埃を立てて駆け回る男たちの汚らしさ、そして大迫力の銃撃戦。映画館の大スクリーンならひとつひとつの…
尊王攘夷派(外国は出て行け派)vs佐幕派(とりあえず開国派)の対立が徐々に鮮明になっていく。竜馬は尊王攘夷を唱える過激派にシンパシーが持てない。幕府は倒したい。しかし、佐幕派を殺害するテロの手法で世の中は本当に変わるのだろうか。 竜馬にはまだ…
村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』の続編だ。 時は流れて1973年。主人公の「僕」は大学卒業後、友人と翻訳を扱う会社を立ち上げた。仕事はうまくいっている。一方、親友の「鼠」は大学中退後もずっと地元に残っている。状況は違えど、「僕」と「鼠」は似…
司馬遼太郎の代表作『竜馬がゆく』を再々読している。今回は読書日記を書くつもりで舐めるように読んでいるせいか、新たな発見がいくつもあった。以前は、竜馬が繊細で複雑な性格の持ち主として描かれていることに気が付かなかった。キャラクターに魅力があ…
村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』を再読。村上春樹の原点だと改めて認識した。 村上春樹著『風の歌を聴け』(講談社文庫) ざっくりとした内容 *「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」 主人公の「僕」が影響…
『国盗り物語』が「サンデー毎日」に連載されたのは、1963年から1966年のことだ。当時、裏切者として悪名高い明智光秀を、歴史や伝統に関する教養が深く、軍事面や民政面でも優れていた武将として「再発見」したことは、相当新しいことだったのではないだろ…
物語後半の主人公は、斎藤道三から、織田信長と明智光秀に移っていく。織田信長は道山の娘・濃姫の婿であり、明智光秀は道三の正妻・小見の方の甥にあたる。道三はこのふたりの才能を高く評価した。「わしは一生のうちずいぶんと男というものを見てきたが、…
石田穣二訳注『新版 枕草子』(上・下)角川ソフィア文庫 若いお母さんたちには腹が立つ。あちこち散らかす子どもをほったらかして、おしゃべりに夢中になっている。たいした注意もせず、「そんなことしちゃだめだよ~」とか笑顔で言っているだけ。どうかし…
天下取りの野望を抱き、その足掛かりとして美濃を「盗った」斎藤道山編の後編をお送りする。 司馬遼太郎著『国盗り物語』(2)斎藤道三<後編>(新潮文庫) ざっくりした内容 クーデターにより土岐政頼を追放し、自分の思いのままに動かせる土岐頼芸を美濃…
司馬遼太郎でおすすめは?と聞かれたら、やはり『国盗り物語』(全4巻)をおすすめする。1~2巻は斎藤道三編、3~4巻は織田信長編。何度読んでも圧倒的な面白さだ。 司馬遼太郎著『国盗り物語』(1)斎藤道三<前編>(新潮文庫) ざっくりした内容 1517年。…
『デカメロン』も最終巻となる。下巻は第8目から第10日目が収録されている。これで十日物語の100話をすべて読み切ったことになる。 ボッカッチョ著『デカメロン』<下>(平川祐弘訳/河出文庫) ざっくりとした内容 下巻に入っているのは8日目から10日目ま…
山内昌之氏による「まえがき」で初めて知ったことがふたつある。一つ目は、今の高校では世界史が必修科目で日本史が選択科目だということ。二つ目は、2022年度から高校に新必修科目として「歴史総合」という、世界史と日本史を融合させた科目が登場するとい…
『デカメロン』はペストが蔓延していた14世紀のイタリア・フィレンツェにおいて、10人の若き男女が郊外へ避難し、そこで代わる代わるみんなを楽しませる物語を語っていく話だ。中巻には第4日から第7日までの話が載っている。 ボッカッチョ著『デカメロン』<…
「見ておいて損はない名作映画100選」の6作目は日本映画から。 邦画というとどうしても黒澤明や小津安二郎の名が挙げられるが、名画100選の選者(夫のこと)が「日本映画を代表する名監督といえば、黒澤でもなく小津でもなく、まぎれもなく成瀬巳喜男である…
野島博之著『三行で完全にわかる日本史』(集英社) 「これさえ読めば日本史のアウトラインはわかる。暗記前にこの一冊を仕上げておけば・・・」という初学者用の本は多い。ところが「あれもこれも」と盛り込みすぎるのか、肝心のアウトラインがぼやけている…
「見ておいて損はない名作映画100選」の5作目は韓国映画だ。 いい映画とは「見る人によってさまざまな解釈が成り立つこと」「見るたびにさまざまな発見があること」だと思う。この映画はまさにそういう映画だ。商業高校で仲良しだった5人組の女子高生たちが…
世界近代文学50選の2作目。ほとんど読まれていないといわれている『ロビンソン・クルーソー』の下巻である。 デフォー著『ロビンソン・クルーソー』<下>(平井正穂著/岩波文庫) ざっくりとした内容 *妻の死をきっかけに、ロビンソン・クルーソーは再び…
見ておいて損はない名作映画100選の4作目は台湾映画だ。派手さはないが、じわじわと静かな感動が迫ってくる作品だ。 4作目。 藍色夏恋(2002/台湾・フランス)藍色大門 BLUE GATE CROSSING監督:イー・ツーイェン出演:チェン・ボーリン/グイ・ルンメイ/…
「世界近代文学50選」の2作目だ。 デフォー著『ロビンソン・クルーソー』<上>(平井正穂著/岩波文庫) ざっくりとした内容 *時は17世紀。ロビンソン・クルーソーは「世界中を旅したい!」という放浪癖に取りつかれているものの、貿易商人の船に乗り込ん…
この映画はかつて映画館で見たことがある。「いい映画だな」という印象は受けたものの、中身はほとんど忘れてしまっていた。だから今回DVDで見直して驚いた。こんなにもいい映画だったか?当時、私は何を見ていたのだろうか。 アフガン難民がブローカーにカ…
「見ておいて損はない名作映画100選」の2作目。せっかく選んでもらったのだが、TSUTAYAでレンタルDVDを扱っていないため、見ることができていない。とりあえず宿題ということで、作品名だけあげておく。 2作目。ケン・ローチの作品だ。 マイ・ネーム・イズ・…
桑原武夫が『文学入門』で選んだ「世界近代文学50選」。読んでおいて損はないということなので、1冊ずつかんたんレビューを挙げていきたい。 ということで、まず1作目だ。 ボッカッチョ著『デカメロン』<上>(平川祐弘訳/河出文庫) ざっくりした内容 *1…
私は、映画というものをほとんど見ていない。だから世の中にどんな素晴らしい映画があるのか知らないのだが、全く知らずにいるのももったいないような気がしてきた。そこで、必ず見ておくべき名作映画100選、というものを映画をライフワークとしている夫にピ…
李淳馹(リ・スンイル)著『青き闘球部ー東京朝鮮高校ラグビー部の目指すノーサイド』(ポット出版) ざっくりとした内容 *1975年、東京朝鮮高校ラグビー部創設。顧問の先生も含めてラグビー経験者皆無のド素人集団だ。ところがある日、「君たちの練習見て…
中村敏雄著『オフサイドはなぜ反則か』(平凡社ライブラリー) ざっくりとした内容 *オフサイドがなかったら、すぐにゲームが終わっちゃう!短いゲームなんて言語道断、ゲームは長ければ長いほどいいんだよ。なぜって、フットボールは人々と感情を共有する…
司馬遼太郎著『峠』<下>(新潮文庫) 河井継之助の「長岡藩独立国構想」。それは、勤皇派にも佐幕派にも属せず「長岡国」として独立するという構想だった。徳川慶喜が大政奉還をして新政府に恭順の意を示している今、官軍の最大の目標は会津藩となっている…