こだいらぽんたの読書日記

古典多めの読書日記です。名作映画100選もあります。

動物の不思議な行動にはそれなりの理由がある。『ソロモンの指環ー動物行動学入門ー』

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コンラート・ローレンツ著/日高敏隆訳『ソロモンの指環ー動物行動学入門ー』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

この本を読むと、人間には理解しがたい行動でも、動物には動物の理屈があることがわかる。

たとえばイヌだ。イヌにはジャッカルを祖先としているものと、オオカミを祖先としているものがある。ジャッカル系のイヌは誰とでも仲良くなりすぎ、誰が綱を引っ張ってもよろこんでついていってしまう。しかしオオカミ系のイヌは、一生涯主人を変えることがない。一度忠誠を誓った相手以外には、誰にもなつかないのだ。なにかの事情で飼い主がオオカミ系のイヌを手放したとしよう。すると、彼は心理的平衡を失ってしまい、問題行動を繰り返す「悪いイヌ」になってしまう。「わがままな性格」なわけではなく、イヌにはイヌなりの事情があるのだ。

 

草食動物同士がケンカをすると抑えが効かなくなるという話も面白かった。「平和の象徴」であるはずのハトは、ケンカをすると抑えが効かず、相手が死ぬまでつつきまわす。背中じゅうの羽毛をむしり取り、一面にベロリと皮をむき、相手がぐったりとして抵抗できなくなっても、なお冷酷に傷つける。ウサギも「バンビ」でおなじみのノロジカも似たり寄ったりだ。ところが、「おそろしい肉食獣」であるはずのオオカミは同族同士で殺し合うことはない。ケンカをするときは、しっぽの匂いを嗅ぎ合ってガンを飛ばし合うのだが、最後は負けた方が急所である首すじを差し出して降参のポーズをとる。しかし、勝った方のオオカミは決して首すじに噛みついて殺すことはない。同族同士のケンカにおいて、草食動物の方が残酷で、肉食動物の方が抑制が効くというのはどういうことなのか。

ある種類の動物がその進化の歩みのうちに、一撃で仲間を殺せるほどの武器を発達させたとする。そうなったときその動物は、武器の進化と並行して、種の存続をおびやかしかねないその武器の使用を妨げるような社会的抑制をも発達させねばならなかった。(P277)

人間は武器は持っているが、社会的抑制は効いているだろうか。動物の行動は、人間に置き換えてみると、さまざまな示唆に富んでいる。

 

コクマルガラスは筆者が最も愛する動物だ。カラス社会にも序列があって、最高位にいるカラスはナンバー2のカラスに厳しく、すぐに腹を立てる。順位がずっと低いものに対しては攻撃しようとはしない。(そこへくると、ニワトリは最下位のものを特に好んで追い回す。)面白いのは、順位が低かったメスが最高位のオスとカップルになったとたん、「大統領夫人」としてふるまうことだ。最高位のオスの妻なのだから仕方がないと周囲も認知する。なんだか人間のようではあるまいか。

 

ほかにも、イタズラ好きのオウムやら、一生懸命子育てをする宝石魚やら、さまざまな動物が出てくる。何度読んでも、どの章から読んでも、感動してしまう名作である。 

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