こだいらぽんたの読書日記

古典多めの読書日記です。名作映画100選もあります。

李淳馹(リ・スンイル)著『青き闘球部ー東京朝鮮高校ラグビー部の目指すノーサイド』(ポット出版)

f:id:kodairaponta:20180105160555j:plain

李淳馹(リ・スンイル)著『青き闘球部ー東京朝鮮高校ラグビー部の目指すノーサイド』(ポット出版

ざっくりとした内容

*1975年、東京朝鮮高校ラグビー部創設。顧問の先生も含めてラグビー経験者皆無のド素人集団だ。ところがある日、「君たちの練習見てたけど、あまりの下手くそぶりに居ても立っても居られなくて来ちゃった。俺が教えてもいい?」と、突然謎の日本人がやってきた。聞けば、大東文化大学ラグビー部のOBだという。あまり日本人と接点のなかった朝高生たちは「ざわざわざわ」。どうなる、朝高ラグビー部!?

*時は流れて、ラグビー部9期生が監督になる。年末になると、監督自ら大型バスを運転して部員たちを花園に連れて行く。「ホンモノを見せてやりたい!」という親心だ。とんでもない不良がラグビー部に入ってきたり、部員が万引きしちゃったり、「おれ、ラグビーやめた~い」とか言い出す奴らがいたり、練習試合を申し込んでも朝鮮高校と聞いただけでソッコーで断られたり。監督の苦労話、あれこれありすぎ。

*さらに時は流れて2000年。ラグビー部は東京大会の決勝で敗れ、あと一歩というところで花園の切符を逃してしまう。しかし、よくぞここまで強くなった。「ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン」。朝高ラグビー部は多くの人々に支えられ、これからも成長し続ける!

 

かんたんレビュー

1975年に創設された東京朝鮮高校ラグビー部は、どうしようもない下手くそ集団だった。経験者ゼロ。練習も自己流。ルールもあまりよく知らない。そんな彼らを、隣の建物から見ていた日本人の元ラガーマンが「居てもたってもいられないから教えてあげるよ」と、グラウンドの金網の穴から勝手に入ってきてしまうシーンは漫画のように劇的だ。朝鮮高校の生徒も日本人とあまり交流がないから、びっくりして警戒心を抱く。ところが彼が教えてくれたラグビーは、朝高生たちが初めて触れた本格的なラグビーだった。このつかみでぐっと引き寄せられる。

ラグビー部創設時、朝鮮高校はガラの悪い高校で有名だったそうだ。おまけに日本の体育連盟に加入していない高校だったから、どこも練習試合の相手になってくれない。問題が起きたらだれが責任をとるのか。その時、練習相手になってくれた東京の強豪校がいるのだ。ここの監督さんも男気があっていい。さまざまな感動的なエピソードが、朝高ラグビー部をじわりじわりと強くしていくのだ。

東京朝鮮高校がどういうところか、といった知識も身につく。朝鮮高校は在日コリアンが自分の子どもを日本で育てるとき、自分の国の民族教育を授けるために行かせる学校だ。だから韓国籍だけでなく、朝鮮半島にルーツを持つ日本国籍の生徒もいる。
ところで、この本を読むまで、私は朝鮮高校を「北朝鮮国籍の学生が行く学校」なのだと思い込んでいた。ところが、そもそも北朝鮮と日本は国交がないので、北朝鮮国籍の人は日本に定住していないのである。「朝鮮」という”国籍”は、戦前、朝鮮半島からやってきた人々に便宜的に与えられたものだ。戦後、「朝鮮」から「韓国」に国籍を改める者もいる一方で、「朝鮮」籍のまま変更を行わない者もいた。現在「朝鮮」籍を持つ人は、韓国籍への変更を行わなかった無国籍の人たちなのである。

朝鮮高校ゆえの難しさはもちろんある。しかし、ラグビーの理念は「ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン」だ。「ひとりは全体のために、全体はひとりのために」。民族や国籍に関係なく、ラグビー愛する人々に支えられ、東京朝鮮高校ラグビー部は年々強くなっていく。本書には書かれていないが、2015年、東京朝鮮高校はついに花園初出場を果たした。ここにいたるまで、さまざまなドラマがあったかと思うと胸が熱くなる。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村