こだいらぽんたの読書日記

古典多めの読書日記です。名作映画100選もあります。

ボッカッチョ著『デカメロン』<中>(平川祐弘訳/河出文庫)

デカメロン』はペストが蔓延していた14世紀のイタリア・フィレンツェにおいて、10人の若き男女が郊外へ避難し、そこで代わる代わるみんなを楽しませる物語を語っていく話だ。中巻には第4日から第7日までの話が載っている。

f:id:kodairaponta:20180304172014j:plain

ボッカッチョ著『デカメロン』<中>(平川祐弘訳/河出文庫

ざっくりした内容

毎日、お題に沿ってひとりひとりが物語を語る。その中でも印象的なものをひとつ挙げたい。中巻の表紙になっているのはボッティチェリの絵画「ナスタージョ・デリ・オネスティの物語」だ。この絵は『デカメロン』第5日第8話が元ネタになっている。

*ナスタージョは自分よりも位の高い貴族の娘を熱愛するが、娘の方は洟(はな)にもひっかけない。失意のナスタージョが松林を散歩していると、全裸の女が犬に追いかけられている。後ろから騎士が女に追いつき、女を虐殺。なんだこれは?

*この騎士と女は地獄に落ちた亡霊だ。生前、騎士は女に恋心を抱いたが、女はつれない。ついに騎士は自殺してしまう。女は騎士が死んだことを喜び過ぎて死んでしまう。ふたりは地獄に落ち、毎週金曜日に同じ場所同じ時間に虐殺ショーを繰り広げるという罰を受けたのだった。

*ナスタージョはうまく娘と娘の親族を誘い、松林で宴会を開く。そこで彼らが目にしたのは、逃げまどう全裸の女と、女を虐殺する騎士の姿だった。娘は自分の身にも同じことが起こることを恐れ、ナスタージョと結婚する。

 

かんたんレビュー

第5日第8日の話はこわい。毎週金曜日、騎士が犬で全裸の女を追い立て虐殺するという話もおそろしいが、その描写そのものがグロい。

女は二頭の犬に咬みつかれて動くこともできない。跪いて「お慈悲を」と繰り返し叫んでいる。その女の胸に男は全力を振り絞ってやっと刀を突き刺した。刃は体を貫いて背中に出た。この一撃を食らうや女はなお泣き叫びながらうつぶせに倒れた。騎士は脇差の短刀を手に取るや、女の腰を引き裂いた。腹から心臓その他の内臓を取り出すと、二頭の犬にそれを投げ与えた。餓えた犬はただちにそれをがつがつと貪り食った。(中巻・P240-241)

娘はナスタージョと結婚するが、別に彼を愛しているわけではない。自分を熱愛している男につれなくすることで地獄落ちになるのではと、それが恐ろしくて仕方なくナスタージョを受け入れたのだ。そんなのでいいのか?どうも納得いかないが仕方がない。

 

グロい話は他にも出てくる。夫が妻の浮気を知り、妻の愛人を殺して心臓を料理させ、妻に食べさせる話がある。娘の結婚に反対する父親が娘の恋人を殺し、彼の心臓を器に入れて娘の前に差し出す話もある。ところが、愛人の心臓を食べた妻も、恋人の心臓を差し出された娘も平然としている。「ああ、やっぱりこうなったか」と運命を受け入れて、どちらも自害して果てるのだ。ペストが蔓延し、死は身近なものになっているからこそ、この程度(?)のグロさでは動じないということなのか。

ほかにも、とんでもなく嫉妬深い夫やらDV夫やらも登場する。そのたび、妻は頓智をめぐらせて夫を痛い目にあわせ、そのうえ愛人を作っていい思いをしている。意外にも中世の女性たちが強かったことも興味深い。

(下巻につづく)

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村