こだいらぽんたの読書日記

古典多めの読書日記です。名作映画100選もあります。

昭和史への興味をかき立ててくれた一冊。/山内昌之・佐藤優著『大日本史』(文春新書)

山内昌之氏による「まえがき」で初めて知ったことがふたつある。一つ目は、今の高校では世界史が必修科目で日本史が選択科目だということ。二つ目は、2022年度から高校に新必修科目として「歴史総合」という、世界史と日本史を融合させた科目が登場するということだ。ダイナミックで面白そうな科目だ。とはいえ、受験対策としては何をやったらいいんだか大変そうだが。

この本では「世界史と日本史の融合」を意識した近現代史が語られている。中でも最も面白かったのは昭和史だ。昭和史に関しては、戦争だのテロだの暗いイメージがつきまとい興味が持てなかったのだが、この本で考えを改めた。昭和史は面白い。よくも今まで無関心でいられたものだ、と我ながらあきれてしまう。

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山内昌之佐藤優著『大日本史』(文春新書)

私が興味をそそられた昭和史について、個人的に「へえー」と思ったことを三つ挙げたい。

個人的に「へえー」と思った事柄

日中戦争に関しては、陸軍が暴走して始めたとは言い切れない!?

*対米戦争前夜。外交努力をすべきだという昭和天皇vs戦争ありきの陸軍参謀総長のすさまじいやりとりとは。

*8月15日の玉音放送を阻止すべく、陸軍の一部将校が起こしたクーデター未遂事件。

 

かんたんレビュー

「陸軍が暴走して、日本は悲惨な戦争に突き進んだ」という話はよく聞くが、日中戦争に関しては「オレたちの仮想敵国はソ連なんだから、中国なんかと戦争している場合じゃないだろ」と陸軍の一部が考えていたというのは初耳だ。しかもあの石原莞爾が、盧溝橋事件後、戦線不拡大、和平路線を主張していたというから驚きだ。陸軍参謀本部のトップである多田駿も和平交渉継続を訴える。逆に「中国と戦争しよう!」とノリノリだったのが、広田弘毅外務大臣。米内光政海軍大臣も広田を後押しし、外務大臣に従えと多田に圧力をかけている。第二次世界大戦で、日本はアメリカに負けたというより中国に負けた。だから、これは日本にとってかなり大きな出来事だったといえる。 

 

1940年時点、日本の石油輸入依存度は92%であり、その81%はアメリカに依存していた。どう見たって絶対に戦争してはいけない相手だ。こんな相手とどうして戦争してしまったのだろう。

開戦を目前にして、昭和天皇と杉山参謀総長とのすさまじいやりとりがあったという話も初めて知った。「もし戦争になったら、南方作戦はどのくらいで片付くのか」と聞く昭和天皇に、「だいたい5ヶ月くらいで片付きます」と杉山。だが、昭和天皇は納得しない。「支那事変だって、2ヶ月で終わるといっておきながら、4年たっても終わっていないじゃないか」と切り返す。「支那は奥地が広いんで、作戦がうまくいかなかったんですよ」と言い訳する杉山に、「じゃあ、太平洋はもっと広いじゃないか。5ヵ月で片付くってどういうことだ」と昭和天皇。これはすごい。

私は今までずっと、昭和天皇は戦争にノリノリだったのかと思っていた。ところがそうではなかった。昭和天皇は外交で解決できるものなら解決したいと考えていたのだ。それだけに、このやりとりは悲劇的だ。

 

1945年8月15日の「玉音放送」。この前日である14日夜から15日未明にかけて、徹底抗戦を唱える陸軍の一部青年将校たちが、玉音放送を阻止すべくクーデターを企てる。彼らは近衛師団の歩兵連隊を動かし、宮城の占拠に至る。しかし、阿南陸軍大臣が15日の早朝、陸軍官邸で割腹自殺をしたとの報が入り、青年将校たちの反乱も収束していく。クーデターの首謀者たちは自刃。その後玉音放送が流れるという、まるで小説のようなドラマがあった。こんな終戦の迎え方をしていたとは、つゆほども知らなかった。

 

これ以外にも「へえー」はたくさんある。日露戦争を勝利に導いてくれた日英同盟だが、あれは破棄する必要がなかったそうだ。破棄する必要がないならしなければよかったのに、もったいない!

また、アメリカと戦争をしないオプションもあったし、たとえ開戦したとしても最小限の犠牲でなんとか和平に持っていくこともできたという。アメリカが無理難題を突き付けてきた「ハル・ノート」に対しても、もう少し賢い対処方法があったらしい。歴史の流れには逆らえないものかと思いきや、案外いろんな選択肢があったのだ。山内氏の話も佐藤氏の話もわかりやすい。なぜ失敗したのか、失敗を避けるためにどういう手段を取るべきだったのか、具体的に教えてくれる。

歴史はああすりゃよかった、こうすりゃよかったのオンパレードだ。なんだかもどかしい気もするが、過去の出来事から失敗の例を学ぶことで、今に生かせることもある。とにかく、戦争だけは勘弁だ。

 

大日本史』は幕末から昭和史までを扱っているが、ジェットコースターに乗っているかのような感覚で本書を読んだ。特に昭和史には初めて出会ったような気分で読んだ。読んでよかった。

 

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