こだいらぽんたの読書日記

古典多めの読書日記です。名作映画100選もあります。

見ておいて損はない名作映画100選の7作目。映画:ワイルドバンチ

「見ておいて損はない名作映画100選」の7作目だ。ネタバレあり。

この映画こそ映画館で見るべき映画かもしれない。メキシコの赤茶けて乾ききった大地、砂埃を立てて駆け回る男たちの汚らしさ、そして大迫力の銃撃戦。映画館の大スクリーンならひとつひとつのシーンがもっと迫ってくるだろう。

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ワイルドバンチ
(The Wild Bunch/1969/アメリカ)
監督:サム・ペキンパー
出演:ウィリアム・ホールデンアーネスト・ボーグナインロバート・ライアン

ざっくりとした内容

*20世紀初頭のアメリカ・テキサス州。パイクをリーダーとする中年強盗団は鉄道会社の金庫を襲う。パイクはこれを最後にやくざな仕事を引退するつもりだった。ところが鉄道会社に銀貨がたんまりあるという情報は彼らをおびき出すための偽情報だった。彼らの首にかかった賞金目当てに追撃してくる連中と行われる激しい銃撃戦。彼らを振り切り、パイクたちは国境を越えてメキシコに渡る。彼らの仲間であるメキシコ人の若者・エンジェルの案内で、一行はとりあえず彼の故郷の村に落ち着くことにした。

*ところが、エンジェルの故郷は政府軍によって荒らされまくっていた。マパッチ将軍に父親を殺され恋人を連れ去られたエンジェルは憤りを抑えることができない。「村に武器さえあれば抵抗できたはずなのに」。しかしパイクは「忘れろ。さもなきゃ置いてくぞ」と突き放す。その後一行はアグア・ベルデという町に移動する。そこにはマパッチ将軍の本部があった。マパッチ将軍は1万ドルの金貨と引き換えに、米軍の貨物列車から武器を強奪することを提案する。エンジェルは16箱ある武器のうち1箱だけ反政府軍に渡すことをパイクに懇願し、パイクの了承を得る。

*米軍貨物列車から武器を強奪する計画は大成功!エンジェルは約束通り反政府軍に武器を流しパイクは黙認する。しかし、この武器の横流しがマパッチ将軍にばれてしまう。エンジェルはマパッチ将軍に拘束され、凄惨なリンチを受ける。エンジェルを返してもらいたいと直談判する一行。しかしマパッチ将軍は聞き入れない。ついに彼らはたった4人で、100人以上もいるであろうマパッチ軍にどう考えても勝ち目のない戦いを挑むのだった・・・。

かんたんレビュー

映画の背景を知ると、また一味違った楽しみ方ができるかもしれない。

メキシコ革命により、ディアス独裁政権は崩壊する。ところが政権を握った自由主義者のマデロは部下のフエルタ(ウエルタ)将軍に殺害されてしまう。アメリカはフエルタ軍事政権を正当なものとは認めず反政府軍を支援。一方、メキシコ国内の石油権益に目をつけたドイツとイギリスはフエルタ政権を支持する。メキシコ国内では、カリスマ性があったマデロを殺害されたことでほとんどの革命派が反旗を翻していた。目指すはフエルタ軍事政権打倒だ。特に勢いがあったのはパンチョ・ビリャ(ビラ)率いる反政府軍だ。内戦状態でぐちゃぐちゃとなったメキシコがこの映画の背景となっている。西暦でいえば1913年くらいだろうか。第一次世界大戦も間近に迫っている。

それなのに中年強盗団の連中ときたら、クルマも飛行機も見たことがないのだ。馬を巧みに操り、ライフルをばんばん撃ち合い、マパッチ将軍の真っ赤なクルマを見て「なんだありゃ。すげー」なんて目を丸くしている。時代から取り残されたオヤジたちなのだ。

もちろん、リーダーのパイクは自分たちの存在が時代遅れであることを自覚している。そこが哀愁を誘う。「俺たちの時代は終わりだ」と自ら口にしているパイク。鉄道会社の金庫襲撃でたんまり銀貨を手に入れ、老後の資金にして引退しようと考えていたパイク。しかし、鉄道会社のヤマはしくじった。彼の引き際はいつやってくるのだろうか。

中年強盗団は酒と女と金に目がない。喧嘩になると殺し合いになりそうなほど殺気立って罵り合い、これっぽっちも仲が良さそうに見えない。しかしアメリカ軍の貨物列車から武器の強奪に成功したあたりから一体感が生まれてくる。瓶に入ったあめ色のウィスキーを回し飲みするシーンは、固めの盃を交わしているようでかっこいい。

それにしても、この貨物列車の武器強奪シーンの迫力といったらない。土煙をたてて茶色い山道を馬車で駆け抜け、橋にダイナマイトを仕掛け、追っ手を馬ごと川の中に沈めてしまうのだ。疾風怒濤の西部劇。第一次世界大戦間近であることなど忘れてしまう。彼らが略奪した武器の中に機関銃を見つけるまでは。

機関銃や戦車などの新兵器が台頭する時代は第一次世界大戦に訪れた。彼らは機関銃の威力を知ってか知らずか、この新兵器を惜しげもなくマパッチ将軍に渡してしまう。「殺ししか知らない」連中が扱うのにちょうどいい新兵器は、時代遅れの彼らにはなじまないのだ。

 

実は「殺ししか知らない連中とは仕事ができない!」と言い放ったのはパイクではなく、パイクの首を狙うソーントンの言葉だ。かつてパイクの仲間だったソーントンは、服役中のソーントンは懸賞金目当ての金持ちによって仮釈放され、一ヵ月以内にパイクら強盗団を壊滅させれば自由の身になることを約束されている。しかし一ヶ月以内に仕留めることができなければ刑務所に逆戻りだ。だから今は、ソーントンはパイクを追う側にまわっている。しかし「ただ殺せばいい」「ただ奪えばいい」というハゲタカ連中とはどこかなじまない。追手ではありながら、ソーントンも完全にパイク側の人間なのだ。

 

最後のシーンは圧巻だ。仲間のエンジェルがマパッチ将軍に凄惨なリンチを受けているのを見て、ふつふつと煮えたぎるものを押さえきれない中年強盗団。どう考えても勝ち目のない戦いなのに、ライフルを携えて彼らはたった4人で100人以上もいるであろうマパッチ軍の駐屯地に乗り込んでいくのだ。

売春宿で女を抱いた後、パイクがとなりの部屋の仲間に言う。「Let's go!」(行くぜ)。仲間のおっさんは答える。「Why not?」(もちろんさ)。このやり取りが痺れる。話し合いも相談もない。時代に取り残された彼らはついに死に場所を見つけたのだ。そしてすさまじい銃撃戦が始まる。

 

中年強盗団の中で「役立たず」呼ばわりされていたじいさんがただ一人生き残り、反政府軍を引き連れているラストもなかなかすごい。武器強奪で稼いだ金貨を持っているのだからさぞかし大きな顔もできるだろう。ソーントンも反政府軍に合流する。圧倒的な負け犬の中のさらに負け犬だった連中がしっかりと生き残る。このラストはかなり胸に来るものがあった。

 

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