こだいらぽんたの読書日記

古典多めの読書日記です。名作映画100選もあります。

読んでいる人は少ない。でも多くの人に読んでもらいたい名作。/ロジェ・マルタン・デュ・ガール著 『チボー家の人々(12)』『チボー家の人々(13)』

ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(12)エピローグⅠ』『チボー家の人々(13)エピローグⅡ』(山内義雄訳) 『チボー家の人々』第12巻と第13巻「エピローグ」は、第一次世界大戦終結を目前とした1918年5月から始まる。「イペリット・ガス」…

「死が身の回りから遠ざかっている今だからこそ、この本を読んでもらいたい。」 ロジェ・マルタン・デュ・ガール著 『チボー家の人々(11)一九一四年夏Ⅳ』

ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(11)一九一四年夏Ⅳ』(山内義雄訳) 「一九一四年夏」の最終巻だ。なぜ戦争は起こるのか、なぜあらゆる反戦勢力は敗れたのか。初めは戦争反対だった大多数の国民が、「自分の国は自分で守れ!」と、ナシ…

「普通の人々が、どのように戦争に引き込まれていったのか。そのリアルさに震える」/ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(10)一九一四年夏Ⅲ』

ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(10)一九一四年夏Ⅲ』(山内義雄訳) フランス国民の大多数は戦争反対だった。誰しも戦場で殺し合いなんてしたくなかった。ところがいつの間にかずるずると戦争に引き込まれ、「領土保全のためなら仕方な…

「第一次世界大戦はどうしても避けられなかったのか?」/ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(9)一九一四年夏Ⅱ』

ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(9)一九一四年夏Ⅱ』(山内義雄訳) この本を読むと、どうしてもこう問いかけずにはいられない。第一次世界大戦はどうしても避けられなかったのだろうか。避けられたとすれば、どのような手立てがあったの…

「なぜ第一次世界大戦は起きたのか。当時のヨーロッパの雰囲気がわかるノーベル賞受賞作品」/ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(8)一九一四年夏Ⅰ』

ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(8)一九一四年夏Ⅰ』(山内義雄訳) 『チボー家の人々』の「一九一四年夏」シリーズは、1937年にノーベル文学賞が与えられた作品だ。これを読むと、民衆目線でとらえた第一次世界大戦前前夜の雰囲気がわか…

「死ぬのはこんなにも大変なことなのか?」/ロジェ・マルタン・デュ・ガール著 『チボー家の人々(7)ー父の死ー』

ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(7)ー父の死ー』(山内義雄訳) 人は誰でも死ぬ。死ぬときは安らかに眠るように死んでいきたいものだが、思い通りにいくとは限らない。チボー氏の最期は苦痛に満ちた地獄絵そのものとなってしまう。周囲…

「人は、すべての過去に結びつけられている。」/ロジェ・マルタン・デュ・ガール著 『チボー家の人々(6)ーラ・ソレリーナー』(山内義雄訳) 

ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(6)ーラ・ソレリーナー』(山内義雄訳) 行方不明のジャックは、「ラ・ソレリーナ」(イタリア語で「妹」)という小説を変名で雑誌に発表していた。その雑誌からアントワーヌはジャックがスイスのローザ…

「人間の行動や意思決定で、自ら選び取っているものは案外少ない」/ロジェ・マルタン・デュ・ガール著 『チボー家の人々(5)ー診察ー』(山内義雄訳)

ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(5)ー診察ー』(山内義雄訳) 時は1913年。第4巻から3年の月日がたった。 32歳になったアントワーヌは医師として充実した日々を過ごしていた。第5巻はそんなアントワーヌのある一日を描写したものとなっ…

「暴力で女を支配する男と、ダメ男ぶりで女を支配する男」/ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(4)ー美しい季節Ⅱー』(山内義雄訳)

ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(4)ー美しい季節Ⅱー』(山内義雄訳) 4.美しい季節Ⅱ『チボー家の人々』第4巻のあらすじを紹介する。チボー家の長男アントワーヌは29歳。彼は、父親の秘書シャール氏の娘(血縁関係はないが)に人生…

「恋はそれぞれ、その当事者に似る」/ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(3)ー美しい季節Ⅰー』(山内義雄訳)

ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(3)ー美しい季節Ⅰー』(山内義雄訳) 「恋はそれぞれ、その当事者に似る」は、巻末の店村新次氏の解説による。ジャックとアントワーヌがふたり暮らしをするようになってから5年がたった。ジャック20歳…

「ハラハラドキドキの展開。少年園の<特別室>に入れられたジャックに何が起こったのか?」/ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(2)ー少年園ー』(山内義雄訳)

ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(2)ー少年園ー』(山内義雄訳) 第2巻はまるでサスペンスだ。感化院の<特別室>に入れられたジャックの様子がおかしい。いったい何が起こっているのか?兄のアントワーヌは感化院にジャックの様子を探…

「『大人たちの束縛から逃げ出せ!やつらに何がわかる!』 二人の少年の家出事件から物語は始まる」/ロジェ・マルタン・デュ・ガール著 『チボー家の人々(1)ー灰色のノートー』(山内義雄訳)

ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(1)ー灰色のノートー』(山内義雄訳/白水Uブックス) 面白い。面白すぎて止まらない。この本はチボー家の次男、ジャック・チボーをめぐる群像劇だ。しかしほとんどの本屋には置いていないので、日本では…

ソポクレス著『オイディプス王』(藤沢令夫訳/岩波文庫)

ソポクレス著『オイディプス王』(藤沢令夫訳/岩波文庫) 「青木の世界史B実況中継」に感化されて読んだ本だ。「実況中継」の表記では「ソフォクレス」になっている。脚本形式だが、非常に読みやすかった。描写が生々しくてグロテスクで迫力がある。 テバイ…

ダーウィン著『種の起源』(上・下)(渡辺政隆訳/光文社古典新訳文庫)

ダーウィン著『種の起源』(上・下)(渡辺政隆訳/光文社古典新訳文庫) 「人間の祖先は猿だった。猿が進化して人間になったのだ」という説をぶち上げて、世界中の人たちから非難された人。それがダーウィンのイメージだった。 ところが『種の起源』には、…

ショーペンハウアー著『読書について』(鈴木芳子訳/光文社古典新訳文庫)

ショーペンハウアー著『読書について』(鈴木芳子訳/光文社古典新訳文庫) この本にはガツンとくる、あまりにも有名な部分がある。 読書するとは、自分でものを考えずに、代わりに他人に考えてもらうことだ。他人の心の運びをなぞっているだけだ。(P138-13…

井筒俊彦『イスラーム文化ーその根底にあるものー』(岩波文庫)

井筒俊彦「イスラーム文化ーその根底にあるものー」(岩波文庫) 井筒先生の解説は本当にわかりやすい。イスラームについて知りたかったら、この本は超おすすめだ。イスラーム教はキリスト教徒よく似ているといわれる。しかしこの本を読んで強く感じたのは、…

作者未詳『虫めづる姫君 堤中納言物語』(蜂飼耳訳/光文社古典新訳文庫)

作者未詳『虫めづる姫君 堤中納言物語』(蜂飼耳訳/光文社古典新訳文庫) 平安貴族はいかにもヒマそうだ。書物もなかなか手に入らない時代だ。いったい何をして暮らしているのか?ところが、いかにもヒマそうな平安貴族の物語はとても面白かった。 「堤中納…

書物と真剣に格闘するということ。/アウグスティヌス著『告白Ⅲ』(山田晶訳/中公文庫)

アウグスティヌス著『告白Ⅲ』(山田晶訳/中公文庫) 最終巻「告白Ⅲ」は哲学的な要素が入ってきて、突然難しくなる。私の読解力(および基礎知識)では理解できないところも多い。それでも懸命に読んでみた。 それにしても、1600年前によくも「時間とは…

この世に悪は実在しない。あるのは「善の欠如」である。/アウグスティヌス著『告白Ⅱ』(山田晶訳/中公文庫)

アウグスティヌス著『告白Ⅱ』(山田晶訳/中公文庫) アウグスティヌスは北アフリカのタガステに生まれた。カルタゴに遊学し、マニ教に入信。その後、修辞学をカルタゴやローマで教え、そして修辞学教授としてミラノへと渡った。ミラノで出会った司教アンブ…

「最大の教父」は「最大のとんでもない悪童」だった/アウグスティヌス著『告白Ⅰ』(山田晶訳/中公文庫)

アウグスティヌス著『告白Ⅰ』(山田晶訳/中公文庫) アウグスティヌスは、古代ローマカトリック教会の教義を確立するために力をつくした「最大の教父」といわれる。全3巻。かなり読み応えがあった。読書日記は1冊ずつアップする。山田晶氏のあとがきは何度…

藤岡換太郎著『フォッサマグナー日本列島を分断する巨大地溝の正体ー』(ブルーバックス)/地質学は壮大なミステリーだ!

藤岡換太郎著『フォッサマグナー日本列島を分断する巨大地溝の正体ー』(ブルーバックス) 「フォッサマグナ」とは、本州の中央部の、火山が南北に並んで本州を横断している「巨大な地溝」のことだ。西側の境界線は新潟県糸魚川から静岡県までの「糸魚川ー静…

姫野桂著『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)/本当に困っているなら当事者同士で分かち合おう。

姫野桂著『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書) 「発達障害グレーゾーン」とは、専門医から発達障害だと正式に診断されたわけではないが、定型発達(健常者)とも言い切れない層のことをいう。障害者手帳をもらったり薬を服用したりするほど重い症状が出て…

ハンス・ロスリング著『ファクトフルネス』/世界を認識するための豊富な具体例が面白い。

ハンス・ロスリング著『ファクトフルネスー10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣ー』(日経BP社) 『ファクトフルネス』は「世界が分断され大半の人が惨めで困窮した生活を送っている」という思い込みを捨て、事実に基づいて世界を認識…

内藤正典著『外国人労働者・移民・難民ってだれのこと?』(集英社)/「外国人労働者・移民・難民に対する漠然とした不安を抱く前に、この本を読もう」

内藤正典著『外国人労働者・移民・難民ってだれのこと?』(集英社) ぽんたの独断レビュー 実にタイムリーな本が出た。 2018年日本政府が50万人もの外国人労働者を受け入れる方針(あとで約35万人に下方修正)を発表したときに、「うわっ、大丈夫かな」と思…

新天地アメリカにおける初期ピューリタニズムのグロテスクさ。/ホーンソン著『緋文字』(小川高義訳)

ホーンソン著『緋文字』(小川高義訳/光文社古典新訳文庫) ざっくりとした内容 *17世紀ボストン。三カ月の赤ん坊を胸に抱いた一人の美しい女性が、刑台の上で衆人環視の場に立たされた。彼女の名はヘスター・プリン。不倫をしたうえに不義の子をなした罪…

忘れたい過去も苦い思い出も、自分自身の一部として存在している。/村上春樹著『ノルウェイの森』(下巻)

村上春樹著『ノルウェイの森』(下巻)(講談社文庫) ざっくりとした内容 *直子の療養所から帰ってきた「僕」は、現実世界に戻って来れない不思議な感覚を覚えていた。そんな「僕」を現実世界に引き戻してくれたのは緑だった。ある日曜日、緑に誘われて「…

自分の中のさまざまなものが失われていくこと。それは死と同意義である。/村上春樹著『ノルウェイの森』(上巻)

村上春樹著『ノルウェイの森』(上巻)(講談社文庫) ざっくりとした内容 *ハンブルク空港に着陸しようとしている飛行機のスピーカーからBGM「ノルウェイの森」が流れるところから話は始まる。この曲は現在37歳の「僕」に自分が失ってきた多くのものを呼び…

佐藤優著『人をつくる読書術』(青春新書インテリジェンス)

佐藤優著『人をつくる読書術』(青春新書インテリジェンス) 世の中には「本を読む人」と「本を読まない人」がいる。そして「本を読む人」にしか得られないものがある。本書は何をどのように読むか、さらになぜ読まなければならないか体系的にわかりやすく書…

他者とのつながりを失った「僕」が救済される物語/村上春樹著『羊をめぐる冒険』(下)(講談社文庫)

自分の存在は他者という鏡を通して確かめることができる。他人がいるからこそ、自分がいる。ところが他者との関わりが全く失われてしまったとき、人は自分自身の存在を確かめることはできない。 主人公の「僕」は自分自身を映し出す鏡をすべて失ってしまった…

謎が謎を呼ぶ物語。どのピースがどこにはまるのだろうか。/村上春樹著『羊をめぐる冒険』(上)(講談社文庫)

『羊をめぐる冒険』は、『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』に続く「青春三部作」の完結編だ。謎だらけの小説なので、謎をあらかた書き出しておいた。どのピースがどこにはまるのだろうか。ドキドキしながら読んでいる。 村上春樹著『羊をめぐる冒険』(…