こだいらぽんたの読書日記

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内藤正典著『外国人労働者・移民・難民ってだれのこと?』(集英社)/「外国人労働者・移民・難民に対する漠然とした不安を抱く前に、この本を読もう」

内藤正典著『外国人労働者・移民・難民ってだれのこと?』(集英社

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ぽんたの独断レビュー

実にタイムリーな本が出た。

2018年日本政府が50万人もの外国人労働者を受け入れる方針(あとで約35万人に下方修正)を発表したときに、「うわっ、大丈夫かな」と思った人は少なくないはずだ。「日本は少子高齢化で人手不足だ。だから海外から働いてくれる人を受け入れなければ衰退していくであろう」ということは頭ではわかる。その一方で「そんなに大勢の外国人が押し寄せてきたら治安はどうなるのか?マナーは守ってくれるのか?」という漠然とした不安もある。私たちはどのようなことを覚悟し、どのような準備をすればいいのだろうか。

それを具体的に示してくれるのがこの本だ。

まず、著者の基本的なスタンスは「外国人労働者」ではなく「移民」を受け入れるべきだということだ。加えて、日本政府の外国人労働者をめぐる行き当たりばったり政策に警鐘も鳴らしている。このままではいけないのだ。

それでは外国人労働者と移民の違いは何か。はっきりした定義があるわけではないらしいが、外国人労働者とは比較的短期で働きに来る人を指し、移民とはその国にずっと住み続ける人のことを指す。一般的には家族と一緒に定住した人たちのことを、その家族も含めて移民という。

なぜ「外国人労働者」ではなく「移民」を受け入れるべきなのか。

たとえば、短期的に働きに来た外国人労働者が、もっと稼ぎたいからと滞在期間を延長し更新するケースがある。雇う側にしても人手不足ではあるし、新しい人に仕事を一から教えるよりも慣れた人にずっと続けてもらいたい。こうして滞在期間を延長していく間に、外国人労働者は家族を持つようになる。しかし身分は宙ぶらりんのまま。これでは不安になって当然だろう。

こういう状態のまま外国人労働者とその家族を放置していると、彼らは社会になかなかなじみませんし、参加しようという意識も芽生えません。

いつか母国に帰るのだから、言葉を勉強したってしょうがないよね、住んでいる国の文化を勉強しても意味がないよね、こういう気持ちにもなてしまいます。これは受け入れる側の社会にとって、良いことでしょうか。

この状態が進むと、同じ国から来た人たちだけで、孤立したコミュニティをつくるようになってしまいます。

それを防ぐため、外国人労働者を受け入れた国は、長年にわたって滞在を認めるなら、その国の国民とほぼ同じ権利を与えなくてはいけない、という方向に変わっていきました。これが、外国人労働者から移民への移行です。(P20-21)

「移民の犯罪が増えるのは、彼らがその国の社会で、平等に扱われていない場合」(P219)だと筆者は言う。それはそうだ。人間らしい扱いをされなければ、誰だってモラルが下がって当然だ。そもそも「低賃金で働いてもらいたいし税金も払ってもらいたい。不景気になったら国に帰ってもらいたい」という非人道的な扱いが許されるはずがない。

第4章の「日本はどうやって外国人労働者を受け入れるの?」はかなり読みごたえがあった。外国人労働者をめぐる日本の現状が具体的にわかるし、このままではいけないことが本当によくわかる。また、移民を受け入れた先例(特にドイツ)に起きた混乱や摩擦も興味深かった。

日本は移民を受け入れなければ立ち行かなくなっていることは明らかだ。だから覚悟を決めるしかない。まずは現状を知り、いたずらに被害妄想を膨らませないことが大切だ。

ところで、第8章「外国人と仲良くなろう」にはいい話が載っている。群馬県富士重工の工場に、バングラデシュ人たちが働きにやってきた。工場で働いているパート従業員の女性たちが彼らのためにお弁当を作った。しかし彼らの90%はイスラム教で豚が食べられない。そこで彼らが「豚が食べられない」ことを伝えると、パートの女性たちは「じゃあほかの材料で作ってくるわ」とあっさり対応したのだという。違う文化の人たちに柔軟に対応するしなやかさ。こういう知性こそが大切なのだろうと思う。

 

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