こだいらぽんたの読書日記

古典多めの読書日記です。名作映画100選もあります。

ハンス・ロスリング著『ファクトフルネス』/世界を認識するための豊富な具体例が面白い。

ハンス・ロスリング著『ファクトフルネスー10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣ー』(日経BP社)

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『ファクトフルネス』は「世界が分断され大半の人が惨めで困窮した生活を送っている」という思い込みを捨て、事実に基づいて世界を認識しようという本だ。著者のハンス・ロスリングはスウェーデンで「国境なき医師団」を立ち上げた医師であり、公衆衛生のスペシャリストでもある。

著者は世界を認識する方法として、世界70億の人口を、1日当たりの所得で4つのレベルに分けて見ることを提案する。

レベル1(1日1ドル)はぬかるみにたまった泥水を数時間かけて運び、粥を調理するような最貧困レベルだ。レベル2(1日4ドル)は自転車で一日分の水を運べるようになり、停電のない日は電球の明かりが使える。レベル3(1日16ドル)は水道管を使えるので水の調達には行く必要がない。安定した電力のおかげで冷蔵庫も使えるしバイクも買える。レベル4(1日32ドル)は裕福な消費者だ。蛇口からお湯も出るし、車も買える。このように収入のレベルに応じて世界を俯瞰すると、世界の大部分の人々はレベル2か3の国に暮らしている。筆者は世界を「裕福な国」と「貧しい国」にバッサリと分ける認識の仕方は間違っていると主張する。なぜなら貧しさにもレベルの違いがあるからだ。

筆者の主張を裏付けているのは豊富な具体例だ。これが面白い。たとえば、チュニジアのレベル2と3に暮らす人々の自宅は作りかけのものが多い。これを見て「チュニジア人は怠け者」と思ってはいけない。彼らは銀行口座を開くことができない。しかし現金を手もとに置いておくと盗まれる心配がある。そこで彼らはレンガを買えるときに買い、少しずつ積み上げてゆっくりと家を作っていく。盗まれることもなく、インフレで価値が減ることもないレンガで、家族全員がいつかはいい家に住めるというわけだ。事情を知ると合理的だ。自分が「普通」で他はアホだと決めつけてはいけないのだ。

東日本大震災についても触れられている。

原発の近くに住んでいた人は避難したが、そのうちの約1600人は避難後に亡くなった。死因は放射能被ばくではない。そもそも執筆時点で、福島の原発事故による被ばくで亡くなった人は、ひとりも見つかっていない。避難後に亡くなった人の多くは高齢者で、避難の影響で体調が悪化したり、ストレスが積み重なったりして死亡した。人々の命が奪われた原因は被ばくではなく、被ばくを恐れての避難だった。(P148)

この文章は、恐怖本能を暴走させると大惨事を招くことになるので用心しなければならないという文脈で書かれている。「人々の命が奪われた原因は被ばくではなく、被ばくを恐れての避難だった」ということばには考えさせられるところがある。

 

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